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<フェスタサマーミューザKAWASAKI2021 レポート2>

<フェスタサマーミューザKAWASAKI2021 レポート2>

やはりシェフが振る公演は格別だ! 今年のフェスタサマーミューザのベスト3、その 2。<フェスタサマーミューザKAWASAKI2021 レポート2>
  • 柴田克彦
    2021.08.12
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2021年8月4日 広上淳一指揮/京都市交響楽団
2021年8月6日 アンドレア・バッティストーニ指揮/東京フィルハーモニー交響楽団
何れもミューザ川崎シンフォニーホール

 高関健&東京シティ・フィルに続いて、フェスタサマーミューザKAWASAKI2021のベスト3の残る2つを。

 まずは広上&京都市響。当音楽祭には2017年から地方都市オーケストラが順次参加しており、今年はオーケストラ・アンサンブル金沢と京都市交響楽団が出演した。中でも広上&京響は注目の公演だ。当コンビは日本屈指との呼び声が高く、しかも2008年からシェフを務める京響飛躍の立役者・広上が2022年3月に退任するというから、今回は集大成的パフォーマンスに首都圏で接する貴重な機会となる。

 演奏については別途記した(毎日新聞クラシックナビ)ので、ここでは簡単に触れるが、期待以上であったことは確か。特にマイルドで豊潤なサウンドが素晴らしく、京響が在京の強豪とは異なる個性を持った日本最上級のオーケストラであることを実感させられた。演目は、ブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲と、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。ブラームスは優美な好演で、ヴァイオリンの黒川侑とチェロの佐藤晴真が呼吸も絶妙な瑞々しいソロで魅了した。ベートーヴェンはモダン・オケの良さを生かしたしなやかでふくよかな表現。攻撃型ではないが、個人的にはいつになく魅力的な「英雄」だった。

 そしてバッティストーニ&東京フィル。バッティストーニは2016年から首席指揮者を務めており、彼が振ると必ずや東京フィルに生気と躍動感と歌が漲る。今回はその持ち味を発揮するに相応しい「イタリア・プロ」が組まれているので、当音楽祭の中でも楽しみにしていた公演だ。

 これまた期待通り、いや期待以上の快演が展開された。1曲目はヴェルディの歌劇「シチリア島の夕べの祈り」序曲。カンタービレと力感が共生した、まさしくイタリア・オペラの世界だ。おつぎのレスピーギの組曲「シバの女王ベルキス」は目眩くスペクタクル。静かな曲の神秘的な美感もさることながら、激しい2曲の活力とダイナミズムは圧巻の一語に尽きる。なお、あえて用いられた日本の太鼓も不思議な異国感を醸し出していた。後半最初はニーノ・ロータのハープ協奏曲。この曲、CDで聴くと今ひとつ物足りなさを感じるのだが、今回の演奏は全く違っていて、独特の柔らかい肌触りが魅力的な美しい作品であることに気付かされた。もちろん明瞭かつ美麗な吉野直子の妙技に拠るところ大だが、バックの精妙なトーンも大いに貢献。これは思わぬ収穫だった。そしてレスピーギの「ローマの松」は凄絶なクライマックス。あらゆる音に生気が宿り、動的でカラフルなことこの上ない。「アッピア街道の松」は当然のごとく盛り上がり、最後はホールを揺るがす大サウンドが圧倒的な興奮をもたらした。ちなみに、最後の一歩手前で大音響に達したのでこの先どうなるのか?と心配になったが、驚くことにもう一段音量を上げて終結した。さすがバッティストーニ、その辺りの設計に抜かりはない。本公演は極めてエキサイティングであり、こうした有無を言わせぬ迫力は生オーケストラの大きな醍醐味だ。正直なところ「この演奏に細かい注文を付けるやつは、オーケストラなど聴かんでよろし」と言いたいほどだった。

 高関健&東京シティ・フィルを含めた3公演は、三者三様の名演。だからこそオーケストラ音楽は愉しく、フェスタサマーミューザも面白い。
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