強靭で輝かしいが…… 海外オーケストラの来日ラッシュ第6弾

強靭で輝かしいが…… 海外オーケストラの来日ラッシュ第6弾

アンドリス・ネルソンス指揮/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 2023年11月22日 サントリーホール 
  • 柴田克彦
    2023.11.27
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 “伝統の響きとは何か?”を考えさせられたコンサート。先のウィーン・フィルにもそうした要素はあったが、こちらは“世界最古の市民オーケストラ”であり、旧東のオーケストラゆえに、余計それが気になった。重厚で渋くくすんだ響き……そうしたイメージのゲヴァントハウス・サウンドが、リッカルド・シャイーのシェフ時代に大きく変貌したのは、重々承知している。ブリリアントで強靭な金管が際立つ高機能オーケストラとしてのシャイー&同楽団は、マーラーの交響曲第7番などで鮮烈な名演を聴かせてくれた。だが、ブルックナーの交響曲の中でも表現が難しい第9番で、その方向性を貫くのはどうなのか?と、今回は聴きながら?マークが終始点滅していた。ただし、細やかな作りもなされた輝かしく壮大な演奏であったことは確か。それはゲヴァントハウス管以上にネルソンスの個性が表に出た表現とも言えるだろうか。

 1曲目はワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死。終始張り詰めた緊張感の中で、情念渦巻くような音楽が展開される。だが耽美的な要素は少なく、硬質なテイストが支配してもいた。

 後半のブルックナーの交響曲第9番は、荒々しいまでに激しい演奏。ただそれも、第1、2楽章では1つの魅力となっていたし、第1楽章の切ない主題の場面での急な弱音も、感動的なほどの効果をあげていた。しかし、咆哮する金管楽器、特に陽性の音色で鳴り響くトランペットなど、1、2楽章はまだしも、浄化へと向かう第3楽章ではヘビーに過ぎる。とはいえ、この楽章を「生からの別れ」と捉えるのは、一面的な固定概念なのかもしれない。これはあくまで「未完の大交響曲の第3楽章に過ぎない」……ネルソンスが生み出す音楽はまるでそう言わんばかりだ。ブルックナーの9番をダイナミックで壮大なロマン派交響曲だと思えば、これも1つの光輝な姿なのだろう。
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