伝統のマイルドなサウンドが蘇る! 海外オーケストラの来日ラッシュ第4弾

伝統のマイルドなサウンドが蘇る! 海外オーケストラの来日ラッシュ第4弾

ファビオ・ルイージ指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2023年11月3日 ミューザ川崎シンフォニーホール 
  • 柴田克彦
    2023.11.05
  • お気に入り
 同公演の模様は「毎日クラシックナビ」の「速リポ」のコーナーに書いたので、できる限り重複は避けたいが、ともかく「あのコンセルトヘボウ管のサウンドを久々に体験した」との思いが強い。ルイージ指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管の今ツアー最初の公演。日本では同楽団との初共演となるルイージだが、先にインタビューした際には「もう15~6年の付き合い。最初から良い関係を築くことができ、それ以降毎年のように客演している」と話していた。そして今回はその相性の良さを見事に実証した。

 前半はビゼーの交響曲第1番。これは12型で爽快な演奏が展開された。冒頭から弦楽器を主体としたマイルドな響きに魅せられる。第2楽章はオーボエのソロが絶品だし、その後もしなやかなフレーズが息長く歌われる。この楽章は出色だ。以下の楽章も含めて、これは同曲のフレッシュな魅力が表出された快演。1つ間違うと単調になりがちな曲で、終始インテンポかつ無表情の演奏を聴いて思い切り退屈した記憶もあるのだが、さすがルイージはテンポや表情をさりげなく変えながら、堅牢にして優美なハイセンスの音楽を聴かせてくれた。

 後半のドヴォルザークの交響曲「新世界より」は16型での演奏。こちらも、すこぶるしなやかで自然な美しさに溢れた音楽が繰り広げられた。特に第2楽章のイングリッシュ・ホルンの内声的な歌い回し(第1楽章のフルートなどもそうだった)は滅多に聴けぬもの。バックの弦の細やかな表情変化も素晴らしい。全体に、てらいのないオーソドックスな表現だが、伸びやかな抑揚とほどよいダイナミズムが共存した好演と言っていい。アンコールは、チャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」の「ポロネーズ」。ここでは豊麗かつ色彩的な演奏で、ポテンシャルの高さが示された。

 何よりコンセルヘボウ管の豊穣なサウンド。これはやはり魅力的だ。柔らかくまろやかな弦楽器と突出せずして芳醇な管楽器が融合したヨーロピアンな音は、チェコ・フィルと同様だが、(良い意味で)ローカル感のあるチェコ〜に比べると、こちらはずっと都会的で洗練されている。こうした個性や色合いの違いを間髪入れずに味わえることこそ、海外オーケストラ来日ラッシュならではの意義と楽しみだろう。
1 件
TOP