壮麗でゴージャスなサウンドが会場を包む! <フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 レポート6>

壮麗でゴージャスなサウンドが会場を包む! <フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 レポート6>

セバスティアン・ヴァイグレ指揮/読売日本交響楽団 2023年8月1日  ミューザ川崎シンフォニーホール
  • 柴田克彦
    2023.08.02
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 前公演の鈴木秀美&山形交響楽団からまた一転、今度は豪華でスケールの大きなオーケストラ音楽に浸る。今年の読響は、常任指揮者ヴァイグレに率いられての登場。プログラムは、ベートーヴェンの交響曲第8番。ワーグナー(デ・フリーヘル編曲)の楽劇「ニーベルングの指環」~オーケストラル・アドヴェンチャーというドイツ物だ。これは定期演奏会で組んでもおかしくない内容。そこに当音楽祭と読響の良心が表れている。

 前半のベートーヴェンは12型。躍動感のある第1楽章、軽妙な第2楽章、典雅な第3楽章、溌剌とした第4楽章と、楽曲の特質に即したしなやかで芳醇な演奏が展開される。ヴァイグレもこうした楽曲(もちろん後半も)ではツボを外さないし、全体のバランスもいい。

 読響の特長は色香と光彩に富んだゴージャスなサウンドであり、ヴァイグレの特長が最も発揮されるのはドイツ・オペラもしくはそのテイストを持つ作品だと思う。後半の「アドヴェンチャー・リング」はこれらを満たす格好の演目だ。ただし個人的な好みで言えば、デ・フリーヘルの編曲は、選曲&構成と繋ぎの部分が今ひとつしっくりこない。だが本日は、ヴァイグレの的確かつドラマティックな表現とスムーズな転換が、それをあまり感じさせなかった。

 ここは16型の4管編成で、ハープ4台、ティンパニ2セットを用いた壮大なオーケストラが威力を発揮する。曲の前半はやや不安定だった響きも徐々に良化し、後半はもう壮麗で光輝なゴージャス・サウンドの嵐。特に「ジークフリートのラインへの旅」の重層的かつ爽快な表現は圧巻の一語に尽きる。ジークフリート絡みのソロがやたらと多いホルンも、松坂隼が強靭かつ鮮烈な名奏を披露した。

 このホールで聴く大オーケストラの豪華な音は、もはやそれだけで1つの芸。まさにオーケストラの醍醐味が詰まった公演だった。
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