重厚なN響サウンドは今も健在だった。しかも皆上手い!<フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 レポート4>

重厚なN響サウンドは今も健在だった。しかも皆上手い!<フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 レポート4>

キンボー・イシイ指揮/NHK交響楽団 2023年7月29日 ミューザ川崎シンフォニーホール
  • 柴田克彦
    2023.07.30
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 満席の中で行われたNHK交響楽団の公演。指揮はキンボー・イシイ、プログラムは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番(独奏はマルティン・ガルシア・ガルシア)、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」というロシア物である。この公演の模様は、ミューザ川崎の「ほぼ日刊サマーミューザ」(紙面とWeb。30日に掲載済)と毎日新聞の「毎日クラシックナビ」(Web。こちらは少し後に掲載)に書くので、ここでは簡潔に。

 まず感じたのは、N響の豊麗で重厚な響きと各奏者の上手さだ。今さら言うことでもないが、このホールで異なるオーケストラを続けて聴くと、そのことを強く再認識させられる。ガルシア・ガルシアのピアノは、陽性でダイナミック。従って、ラフマニノフの協奏曲は、重層的なオーケストラのうねりと、それに負けないピアノが織りなす、豪壮で明朗な演奏となった。後半の「シェエラザード」は、豊かな響きと各パートの名人芸の連続技。コンサートマスター郷古廉のヴァイオリン独奏が、ソリストの際の演奏に比べると控えめで、オーケストラの一員色が強かったのは、些か意外だったが、それでもやはり技術は完璧で表現は実に繊細だ。他のパートのソロは、皆滅法上手く、雄弁で前に出てくる。この見事な名人芸を聴くだけで愉しくなってくるし、イシイも、オーケストラの特質を生かしたてらいのない表現で、楽曲の魅力を満喫させた。

 音響の良いホールでN響の底力を改めて実感した公演。こうした経験ができるのも、当音楽祭の魅力の1つだ。
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