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東京佼成ウインドオーケストラ 2019年11月21日 東京芸術劇場

東京佼成ウインドオーケストラ 2019年11月21日 東京芸術劇場

シリアスな古典派~ロマン派に定評あるユベール・スダーンが吹奏楽団を指揮。通常イメージとは一線を画すマイルドな演奏で魅せた。
  • 柴田克彦
    2019.11.27
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 東京交響楽団の音楽監督時代に同楽団のクオリティを大幅に引き上げたスダーンが、日本吹奏楽界のトップに立つ東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)を指揮。両者の共演は2018年1月以来2度目となる。やや意外な組み合わせだが、スダーンの父は吹奏楽畑の音楽家で、彼自身もブラスバンド(金管バンド)での演奏経験があるという。  
 だがそれにしてもあのスダーンがオリヴァドーティの曲を振るとは! これはオーケストラと吹奏楽の両分野を知る者にとって驚き以外の何物でもない。なぜならオリヴァドーティは、おもに1960~70年代の超A級ではない中学生(せいぜい高校生)バンドで多く取り上げられた、平易な位置にある作曲家だからだ。とはいえ、演目は今もレパートリーとして残っている序曲「バラの謝肉祭」。そりゃそうだわな、「イシターの凱旋」とか「ポンセ・デ・レオン」とか「リンゴの谷」とか、さすがにやらないよな……。ともあれ名匠スダーンは甘美な曲を品良く美しく表現し、まるでシューベルトの作品のように響かせた。2曲目、ラヴェルの組曲「クープランの墓」はスダーン本来の特質とTKWOの高い技量が発揮された精緻な演奏。そして、また意外な真島俊夫の「Mont Fuji(富士山)」。故・真島晩年の傑作とはいえ、スダーンがこれも振るとは……。しかし真島特有のフランスの香り漂う濃密かつ劇的な演奏が展開された。後半は、メンデルスゾーンのハルモニームジークのための序曲、R.シュトラウスの歌曲集、ラヴェルの「ボレロ」とクラシック系の音楽ばかり。特殊編成のメンデルスゾーンは一般的な吹奏楽とは別種のサウンドが興趣を誘い、木管楽器(と打楽器)だけで奏されたシュトラウスの歌曲は柔らかみと自然な歌い回しが素晴らしく、「ボレロ」は新アレンジによって新鮮な感触が生み出された。
 全体にマイルドにして密度の濃い響き(全力のフォルテは「ボレロ」の最後くらい)が、通常の吹奏楽とは違った味をもたらした感。TKWOには今後もクラシック系の指揮者の起用を続け、コンクールを主体とした“演る吹奏楽”ではなく、“聴く吹奏楽”の普及に努めてほしいと思うことしきりだ。
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