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レ・シエクルに魅せられているクラシック・ファンは、こちらにもご注目を!

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エヴェルト:金管五重奏曲第1番 他(CD) レ・シエクル金管五重奏団
  • 柴田克彦
    2020.05.11
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 引き続き最近聴いた面白いCDを。このところクラシック・ファンから熱い支持を受けているのが、フランソワ=グザヴィエ・ロト&レ・シエクルだ。「近代音楽を初演当時の響きと奏法で再現する」とのポリシーで活動している彼らは、特に20世紀初頭の作品の鮮烈な演奏で絶大なインパクトを与えている。
 ここでご紹介したいのは、そのメンバーによる金管五重奏のディスク(NoMadMusic)。デュカス「ラ・ペリ」のファンファーレ、ドビュッシー「亜麻色の髪の乙女」の両クラシック編曲物に、金管アンサンブルの古典的名作であるエヴァルトの金管五重奏曲第1番、あまり知られていないアントワーヌ・シモンのアンサンブル小品集 Op.26、さらに知られていない「G」と記された作曲家(フランスのルイ・ジラールらしい)のセレナードが収録されている。これらは、1860年頃から1912年までの間に書かれたロシア&フランスの作品で、金管アンサンブルのCDではあまり見られない選曲がなかなか興味深い。演奏はレ・シエクルのトップ奏者5人。彼らが使用しているのは、1872年から1930年までの間に製作された楽器で、他に1837年製のオフィクレイドが用いられている。
 本作はまず音色が聴きものだ。少しくすんだ素朴かつ柔和でいながら生々しい、あえて例えれば“ジャガイモを丸ごと似たような”音色は、現代の金管楽器の華麗で光輝でシャープなトーンとはかなり異なる。中でもエヴァルトの金管五重奏曲は、まろやかかつエレガントな音楽として再現され、現代楽器では表現しがたい曲本来の味わいを再認識させられる。この当ジャンルの大スタンダード曲のこうした演奏は、金管楽器愛好家にとって新鮮であり、そうでない方には金管アンサンブルの魅力に目を向ける契機となるであろう。またクラシック2曲はことのほか豊麗で、シモンおよび「G」の作品は実に愉しく、いずれも音楽的な充足感がすこぶる高い。むろん難物と思しき古い楽器を操る各奏者のテクニックの凄さは、レ・シエクル本体の演奏で実感した通り。そして何より、これ見よがしに吹き鳴らさず、きわめてセンスがいい。
 金管アンサンブルのCDは、概ね楽器愛好家(演奏者)のみのアイテムになっている。しかしレ・シエクルの良さを生かした本作は、一般の音楽ファンがその魅惑的世界に足を踏み入れる良き糸口になるのではないだろうか。
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