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曲はやや珍しく、演奏はかなり素晴らしい、前期古典派の協奏曲集

曲はやや珍しく、演奏はかなり素晴らしい、前期古典派の協奏曲集

ハイドン: 2つのリラ・オルガニザータのための協奏曲第1&3番 他( CD) アナ・デ・ラ・ヴェガ(フルート)、ラモン・オルテガ・ケロ(オーボエ)、トロンハイム・ソロイスツ
  • 柴田克彦
    2020.04.26
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 コンサートが完全になくなってしまったので、今回も最近聴いたちょっと面白いCDをご紹介しよう。イギリス人とアルゼンチン人の両親の間にオーストラリアで生まれたフルート界の新星アナ・デ・ラ・ヴェガと、日本でも名を知られたオーボエ界の俊才ラモン・オルテガ・ケロが、トロンハイム・ソロイスツをバックに、バロックとモーツァルトを繋ぐ時代の協奏曲を演奏したディスク(2019年6月録音/ペンタトーン)である。 
 まずは、ヨーゼフ・ハイドンの2つのリラ・オルガニザータのための協奏曲第1&3番、カール・シュターミッツのフルートとオーボエのための協奏曲&フルート協奏曲という選曲が面白い。「リラ・オルガニザータ」とは、ナポリ王フェルディナンド4世が愛好したと伝えられるオルガン構造の弦楽器で、ハイドンは同楽器のために複数の作品を残している。オリジナルは朴訥なピアニカもしくは弱いオルガンのような音で、その演奏によるCDも出ているが、大家ランパルとピエルロのフルート&オーボエによる録音、フルート2本、リコーダー2本による録音がなされてもいる。
 本ディスクは全体を通して、ソリスト2人の玲瓏な音色とセンス抜群の歌い回し、フレージングやアーティキュレーションの完璧な揃い方に感嘆させられる。中でもシュターミッツの2本の協奏曲(これもニコレ&ホリガーによる大家の名盤がある)は、2人の妙技が極まった、本作の白眉というべき快演。速い動きの鮮やかな揃い方は特に見事だし、何より聴いていて実に愉しい。同じくシュターミッツのフルート協奏曲は、ヴェガの夾雑物のない音色が効果を発揮した佳演で、これも魅力十分だ。ハイドンの2曲も音楽自体は一流の職人芸。演奏はバックを含めて愉悦感に溢れている。しかも第3番の第2楽章は後の「軍隊」交響曲の緩徐楽章と同じ音楽なので、興味を持って楽しめる。
 これは、一般的にみればレアな選曲ながらも、生き生きとして品が良く、センスも愉悦感も抜群の1枚だ。
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