フルサイズの公演はやはり充実度が高い

フルサイズの公演はやはり充実度が高い

東京交響楽団 川崎定期演奏会 第76回 2020年6月28日 ミューザ川崎シンフォニーホール
  • 柴田克彦
    2020.07.09
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東京フィルに続いて東京交響楽団が有観客の公演を再開した。日付・会場は、6月26日サントリーホールと28日ミューザ川崎シンフォニーホール。指揮は飯守泰次郎、演目はベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲、同じくピアノ協奏曲第3番(独奏:田部京子)、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」で、筆者は川崎公演に足を運んだ。
 入場者数を含めた予防対策はこちらも万全。編成は10型で、東京フィル同様に通常よりも広い縦1.5m、横80cmの間隔を基本としていたが、見た目の違和感はやはり少ないし、ホールの響きの良さと相まってサウンド的な不満もほとんど感じない。東京フィル公演と比べると、弦楽器がやや少なめで、トロンボーン、チューバ、ティンパニ以外の打楽器を含んでいないが、それにも増して重要な点は、序曲、協奏曲、交響曲という定番の構成による、“休憩あり”のフルサイズ・コンサートであること。これは一段の進化といえるだろう。
 本番は、冒頭の「プロメテウスの創造物」序曲から巨匠・飯守らしい悠揚たる演奏。ピアノ協奏曲第3番では、田部が力のこもったソロを展開し、表情豊かな音楽を紡ぎ出す。中でも第2楽章の味わい深さが印象的だ。「スコットランド」交響曲はさらに恰幅の良い表現。極端に言うとワーグナーのようなメンデルスゾーンだが、そのドラマティックな音楽は聴き応え十分だった。
 なお弦楽器と打楽器はマスクを着用していたが、グレーの目立たないタイプで統一されており、会場で見る分には配信時ほどの不自然さを感じなかった。また休憩時も、入場者が少ない上にロビーが広めということもあって、密な状態にはならなかった。
 6月には日本フィルと東京シティ・フィルも無観客(配信)で公演を行い、7月には、新日本フィル、読売日響、日本フィル、東京都響など多くの在京オーケストラが有観客での公演を再開した(あるいは予定している)。入場者数の制限=財政面をはじめとする問題はまだ続くが、1歩1歩前に進んでいるのはともかく喜ばしい。
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