素晴らしきドヴォルザーク 海外オーケストラの来日ラッシュ第3弾

素晴らしきドヴォルザーク 海外オーケストラの来日ラッシュ第3弾

セミヨン・ビシュコフ指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 2023年10月29日 サントリーホール
  • 柴田克彦
    2023.11.01
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 今度はチェコ・フィルのドヴォルザーク・プログラム。これは素晴らしい演奏だった。当公演については、モーストリー・クラシック誌にレポートを書く予定なので、ここでは簡単に触れるが、ともかくビシュコフとチェコ・フィルのコンビネーションは抜群と言っていい。

 序曲「オセロ」冒頭の柔らかなハーモニーと続く弦楽器のしなやかさに、いきなり耳を奪われる。その後もオーケストラのサウンドは柔らかくしなやか。ビシュコフは曲の特性を緻密かつ的確に表出する。次のチェロ協奏曲はパブロ・フェランデスが芳醇なソロで魅せる。豪壮・強靭ではなく、まろやかで陽性の音だが、芯がしっかりしているのでオーケストラに負けることはない。というよりも、オーケストラにマッチした音色で、センス良くパッショネイトに歌う。中でも第2楽章のしみじみとした味わいが光っている。後半の交響曲第8番は、自然でいながら表情豊かで、しかも終始引き締まった演奏が展開される。第3楽章のメロディがこれほど胸に染みたのも久々だし、「いいドヴォ8を聴いた」との思いしきりだ。

 ビシュコフの力まずしてドラマティックな構築性と、若返ってきたチェコ・フィルの意欲溢れるパフォーマンスを堪能した一夜。このオーケストラがこれほど懸命で締まった演奏を聴かせるとは、(失礼ながら)やや意外でもある。それに何より、爆裂せずして充実感のあるヨーロピアンな(あるいは中欧的な)サウンドは、トーンハレ管、オスロ・フィルとアグレッシヴな音や音楽が続いた後に聴くと、妙に心地よい。
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