スタンダードとクラシックとジャンプ

スタンダードとクラシックとジャンプ

エドワード・ヴァン・ヘイレンが亡くなった。『1984』と『5150』(1986)のことなど。
  • 青澤隆明
    2020.10.23
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 思い返せば、キース・ジャレット、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットのトリオの『STANDARDS LIVE』は、ぼくが自分で買ったジャズのLPの最初の一枚だったかもしれない。

 1986年だった。少し前は中学で、みんなこぞってヴァン・ヘイレンの『1984』を聴いていた。それはごくごくあたりまえのことだった。誰もが『週刊少年ジャンプ』を読むのとおんなじだ。

 それから2年のあいだにも、ぼくの聴く音楽はだいぶ変わってきた。と言いたいところだが、キース・ジャレットの『ラスト・ソロ』というビデオ、とくに“Over the Rainbow”がとても好きで、それでキース・ジャレットに強く興味をもったのだと思う。こちらは1984年の東京ライヴで、ベータのビデオカセットで出てすぐに観ていた。だから、ぼくの興味はもっとジャズを聴くようになって、メタルを離れつつあったことを除けば、それほど変わってはいなかったとも言える。もちろん、1986年には、ヴァン・ヘイレンの次作『5150』も友人から借りて聴いていた、ヴォーカルがサミー・ヘイガーにかわっても。ヴァン・ヘイレンはヴァン・ヘイレンだった。

 いまだったらオランダに敬意を表して「ファン・ハーレン」と呼ぶところだが、ヴァン・ヘイレンはやはり「ヴァン・ヘイレン」なのである。その名を聞けば、いくつもの曲も自動的に駆け巡る。「ロック・クラシックス」という言葉がその後出てきたが、彼らの曲は最初からとてもクラシックな感じがする。ヴァン・ヘイレン兄弟のお父さんがクラリネット奏者で、こどもの頃からクラシック音楽が身近だったということも、当時からそれらしく語られていた。

 かつては「ライトハンド奏法」と言われてもてはやされていた、自在なタッピングが鮮やかに跳ねる。エディ・ヴァン・ヘイレンのギターはとてもハッピーだった。聴いていると、うれしくなった。

 エディの息子はヴォルフガングと名づけられ、同じ道を進んだ。英語読みならウルフギャング。なかなかの古典派である。その父、エドワード・ヴァン・ヘイレンが、今年の10月6日に癌で亡くなったと伝えられた。秋がきた。
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