One day there is life. - 節分の日のメンデルスゾーン

One day there is life. - 節分の日のメンデルスゾーン

フェーリクス・メンデルスゾーンとポール・オースターの誕生日に。CD◎マレイ・ペライア(pf)『Songs Without Words(無言歌集)』
  • 青澤隆明
    2022.02.03
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 きょう2月3日は、フェーリクス・メンデルスゾーンの誕生日。生きていれば213歳。といってもなかなか現実味はないが、38歳の非業の死ではなく、もっと生きて、音楽を残してほしかった。そして、アメリカの作家ポール・オースターの誕生日でもある。75歳。ふたりともユダヤ系ということ以外に、すぐに共通点は思いつかないのだけれど。

 確率としてみて、365か366分の1、というのがどれくらい稀少なのかもよくわからないが、めったにあることではないだろう。ぼく自身もこれまで実際に会ったなかでは、同じ誕生日のひとはふたりだけしか知らない。モーツァルトもシューベルトもジェイムズ・ジョイスもみんな水瓶座の仲間である。

 さて、節分の一日も、たちまち夜になった。そうしていま、ぼくは静かな心持ちで、メンデルスゾーンの珠玉の無言歌集を聴いている。マレイ・ペライアの1997年のレコーディング。指の故障からの復帰後にまとめた1枚だ。ペライアはオースターと同じ年にブロンクスに生まれたが、春の生まれというのはしっくりくる。メンデルスゾーンの15の無言歌は、バッハ/ブゾーニとシューベルト/リストに挟まれて、全体で私的な歌のアルバムを織りなしている。なにをやっても手つきが上品で、仕上がりがきれいなひとはいるもので、それがメンデルスゾーンの心やさしさであった。

 One day there is life.
 
 ポール・オースターの“The Invention of Soliytude”の書き出しのその一文を、ぼくはまた思い出している。
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