スタンダーズは生きている

スタンダーズは生きている

LP〇Keith Jarrett, Gary Peacock, Jack DeJohnette “Standards Live" (ECM)
  • 青澤隆明
    2020.10.23
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 キース・ジャレットの演奏活動復帰がいよいよ困難だということが、先日ニューヨーク・タイムズで報じられた。さまざまな人がさまざまなことを思っただろう。なんであれ、あれほどの音楽を聴かせ、生きたものとして感じさせてくれたことへの感謝は大きい。

 初めて買ったキース・ジャレットのレコードは“STANDARDS LIVE”だった。鎌倉の新星堂で、そのLPを手にとった。「星影のステラ」という帯がついていた。ぼくは16歳だった。ということは、一駅分歩いて電車賃を貯めたりしたお金で買った。

 どうしてそのLPだったかというと、まずはそれがキース・ジャレットの最新盤だった。でも、そんなことよりもなによりも、ジャケットが素敵だった。ECMのレコードは『フラトレス』とかいくつか家にあったけれど、スタンダーズのライヴはかっこよくてご機嫌にみえた。

 ペンで描いた絵がトリオの3人みたいに躍動していた。グレーの砂みたいな地の上に。家に帰って、緊張しながらよくみてみると、その絵はフランツ・カフカのスケッチだと記してあった。
 
 そうしたぜんぶが傑作だと思う。何度も針を落として、このレコードを聴いた。まさに、スタンダーズは生きていた。レコード・ジャケットはかなり長い間、ぼくの部屋の壁の高いところに掲げてあった。
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