スノードロップ

スノードロップ

季節のうた。チャイコフスキーの4月。CD◎“Tchaikovsky:The Seasons” Vladimir Tropp (pf) [Fandamenta, 2019]
  • 青澤隆明
    2021.04.03
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 上野は桜だけど、サンクトペテルブルクはスノードロップ。
  L'Arc〜en〜Cielの曲はSnow Dropだったけれど、チャイコフスキーの4月はSnowdrop。そのまま植物の名である。
 作曲家が念頭においたアポロン・マイコフの詩には、「青く、ピュアなスノードロップの花」とあるから、日本でいう松雪草の白い花ではなく、雪割草のほうに近いのだろうか。
 「過去の悲嘆に流れる最後の涙、そして次なるしあわせの最初の夢」。春の訪れをひそやかに喜ぶ、シンプルな詩句は、そのままチャイコフスキーの澄んだやさしさに触れたのだろう。
 きょう聴いていたのは、ウラジミール・トロップのピアノ。透明で温かな音が、ほんとうに雪解けの光を湛え、清らかに流れ出すようで、静かに心に沁みる。
 モスクワ生まれの名匠が2019年2月、80歳をまえにフランスで録音したアルバム。《四季》の12か月を、2つのノクターンがやさしく包む。どの月も深く愛されている。
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