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エイプリル・フール、そして、プライマル。-バート・バカラックとオリジナル・ラヴ

エイプリル・フール、そして、プライマル。-バート・バカラックとオリジナル・ラヴ

メロディーのつくりかた。バート・バカラックとオリジナル・ラヴ。田島貴男さんが語ってくれたこと。 CD◎Original Love / Desire (Pony Canyon)
  • 青澤隆明
    2020.04.01
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 そういうわけで、心のなかですぐ流れるから、その曲をかけてもいない。バート・バカラックの“The April Fools”の話のつづき。ディオンヌ・ワーウィックの歌を聴けば聴いたで、ふわっ、と花が咲いたみたいな気持ちになれるのだろうけど、外は雨で、きょうは一日中ずっと雨だ。

 雨といえば、やはりバカラックの“Raindrops Keep Fallin' on My Head”だろう。同じく作詞家のハル・デイヴィッドとの名コンビで書いた「雨にぬれても」である。映画『明日に向かって撃て!』の挿入歌で、B.Jトーマスが歌っている。もう半世紀も前の曲だ。「ぼくは自由だから、心配することはなにもない」と、いかにもブッチ・キャシディらしいことを口ずさんで。

 さて、バカラックと言えば、10年くらい前、田島貴男さんに話をきいたときのことを思い出す。オリジナル・ラヴでとくに好きな曲はいろいろあるけれど、ぼくは「フレンズ」という曲がむかしからずっと好きなので、いい曲ですね、とそのことをお伝えすると、田島さんがメロディーの話をしてくれた。ちなみに、この曲の作詞は木原龍太郎で、作曲が田島貴男である。
 「メロディーがいいですね。でも、まだ下手です。聞こえはいいけど、2オクターヴくらいあんの」と、田島さんは言った。「バカラックがすごいのは、みんなが歌える。ビートルズもビーチボーイズもそうですけど。誰でも歌える音域で、口ずさめるようにちゃんとつくってある。天才ですよ。これが作曲家だと思い知らされる」と。

 たしかに。ベートーヴェンの「運命」のモティーフなんて、3度だものね。メロディーかどうかはさておき。すぐに覚えられて、すぐに歌わざるを得ない感じになる。

 それにしても、オリジナル・ラヴの「プライマル」は、ほんとうにいいメロディーだ。それにのっている詞も、ものすごい。
 だけど、田島さんは言っていた。「むしろ過去はなかったことにして、それは忘れて、曲を創っている感じで。当時の曲も、当時考えてきたことを再現するのでなく、『プライマル』という曲を使って、いまの自分を表現している。だから、この曲での表現を、いまも発見している。それをステージでやっている」。スタンダードだからこそ、そのいのちは尽きない。

 ということで、結局、きょうは一日、嘘をつかないままに過ごしそう。
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