4月1日がきて -季節のうた

4月1日がきて -季節のうた

季節のうた。“The April Fools”のことなど。 
  • 青澤隆明
    2020.04.01
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 エイプリル・フールだから、つまらない嘘はやめよう。美しい嘘だけにしよう。

 エイプリル・フールと言えば、バート・バカラック。ディオンヌ・ワーウィックが歌ったうただ。正しくは“The April Fools”である、ひとりじゃない。
 これが毎春のように、その日が近づくとかならず思い出される。ぼくの場合、もう30年くらい。大好きな歌だから、自動的にすらりと心に流れて、いつのまにか口ずさんでいる。こういう歌がたくさんあるほど、日々を生きることは楽しい。そして、淡く、せつない。
 
 さて、こんな春にもエイプリル・フールがきて、そう思ったときにはもう、“The April Fools”の歌が心のなかを流れている。イントロから、エンディングまで。あたたかな気持ちになる。春の気持ちになる。歌はすごい、音楽ってすごい、と思う。春はどれも違う春でも、歌はずっとそこにいてくれる。古い友だちのように。

 歌はぼくのことなんて知らないはずなのに、どうしてぼくを知っているのだろう?

 「わたしたち、ただのエイプリル・フールなの? 身のまわりの危険なんて、なんにもみえてない」と、その歌はうたう。季節ごとにその意味は変わるけれど、いまの世にまみれて聞こえることで、歌が傷つくことがないといいと思う。

 もちろん、音楽そのものは決して傷つきはしない。

 4月はもっとも残酷な月、とエリオットは告げていたけれど。
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