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井上道義&読響 マーラー/交響曲第3番 @芸劇 12月6日

井上道義&読響 マーラー/交響曲第3番 @芸劇 12月6日

シアトリカルな演出も含めた、“オーケストラ・オペラ”としてのマーラー《交響曲第3番》。
  • 前島秀国
    2019.12.10
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マーラーの《交響曲第3番》をバレエにしたのはジョン・ノイマイヤーだが、井上道義はなんと“オペラ”にしてしまった。つまり、演出付きの“オーケストラ・オペラ”だ。
マエストロ独特の、音楽と一体化した舞踊的な指揮に先導され、実に多彩な登場人物たち=読響奏者たちのソロが活躍する第1楽章。それが終わると、マーラーの指示通り長めのパウゼが入り、女声合唱が入場してくるが、なぜかアルト独唱と児童合唱は入ってこない。ここが実は大きな伏線となっている。
続いてマエストロは、ディズニー「シリー・シンフォニー」シリーズの緻密な作画のように、第2楽章では魔法の庭園に幻想的な花々を咲かせ、第3楽章では動物たちの動きをヴィヴィッドに描いてみせる。その第3楽章の終わり、動物たちがバタバタと一斉に走り出すようなコーダになると、なんと天使のような衣装に身を包んだ児童合唱の少年たち(TOKYO FM 少年合唱団)が、舞台の上手と下手の両袖から走り込んできたので驚いた。まだ楽章の演奏が終わっていないうちに入場させるなんて、普通ならありえないが、そもそも音楽がそういう情景(動物たちの足音や羽音)を表しているのだから、この“演出”は実は理に適っている。
舞台照明をギリギリまで落とした第4楽章では、当然のことながらアルト独唱(池田香織)の歌は一種のモノローグのように聴こえてくる。ニーチェの歌詞を読めばわかるように、これは真夜中の歌なんだから、明るい照明のまま演奏するほうが、逆に不自然というべきだ。音楽と視覚は完全に一体化している。
真夜中の第4楽章が終わると、舞台転換のように照明が元の明るさに戻り、第5楽章の「ビムバム」の女声合唱(首都圏音楽大学合同コーラス)になだれ込んでいく“演出”は、文字通り天使の降臨のような目覚ましい効果を上げていた。そして、第6楽章の宗教的な高揚感で幕。
ここまでシアトリカルな要素を採り入れたマーラーの演奏は初めて聴いたが、演奏の邪魔にならないどころか、むしろ音楽の理解を深める役割を果たしていたし、もっとこの種の試みは行われていいと思う。実に楽しかった。
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