アラン・ギルバート/都響 第893回定期A 12月9日

アラン・ギルバート/都響 第893回定期A 12月9日

ハンガリーゆかりの作曲家に現代作曲家2人の編曲作を加えた、アラン・ギルバート流“ジルベスター”もしくは”ニューイヤー”コンサート。
  • 前島秀国
    2019.12.10
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会場は東京文化会館。バルトーク《ヴァイオリン協奏曲第1番》(ソロ:矢部達哉)とハイドン《交響曲第90番》を主軸にした“ハンガリアン・コネクション”に、現代をリードする作曲家アダムズとアデスが手掛けた編曲作品を添えた、いかにもギルバートらしい才気溢れるプログラム。比較的小さめの編成の曲が意図的に選ばれているのもポイント。アダムズとアデスが入っているため、パッと見ると尖った印象を受けるプロだが、実はそんなことはない。
まずリスト(これもハンガリアン・コネクションだ)の原曲をアダムズが編曲した《悲しみのゴンドラ》。20年前以上前にCDで初めてこの曲を聴いた時、あのミニマリストのアダムズがこんなジョン・ウィリアムズみたいなアレンジを手掛けるなんて!と驚いた記憶があるが、その後のアダムズの活躍ぶりから振り返って聴くと、“管弦楽法の魔術師”としてのアダムズの片鱗がすでにこの時点で現れていたことがわかる。ロマンティックな方向に寄せた、よい演奏。
後半のアデス《クープランからの3つの習作》(日本初演)は、クープランの《気晴らし》《手品》《煉獄の魂》を室内オケ用に編曲したものだが、なんといっても打楽器の使い方が斬新かつユニークで、これが曲自体の印象を大きく変える重要な役割を果たしている。素材重視の料理に、かなり強い調味料を1滴か2滴垂らすような感じ。
最後のハイドンは終楽章の偽休止のジョークが有名だが、ギルバートと都響は当然そのジョークを強調し、会場全体を大いに沸かせた。なるほど、これはギルバート流“ジルベスター”もしくは“ニューイヤー”コンサートなんだなと感じた。
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