
チョン・ミョンフン ピアノ - Myung Whun Chung piano
CD◎Myung Whun Chung piano (ECM)『エリーゼのために~マエストロからの贈り物 チョン・ミョンフン』(UCCE 7534)
家にいると、ときには大仰な音楽よりも、もっとパーソナルなものを聴きたくなる。個人の想いが激しくないということではなくて、それよりも、親しい人たちに語りかけるような温度で。
そういうとき、ふと手がのびたのが、このアルバム。Myng Whun Chung piano――タイトルが小さく、水墨画ふうにみえなくもない木立の写真の上のほうに記されている。ただ、それだけのことがじんわりと滲むように響いてくるのが、このアルバムの素晴らしさでもある。
チョン・ミョンフンのピアノを聴くのは、とっても久しぶりだ。これが初めてのピアノ・ソロ・アルバムで、2013年7月、フェニーチェ劇場でのレコーディング。ぼくがコンサートで近く思い出すのも、「セヴン・スターズ」と題して彼がひらいていた室内楽で、つまりはもう十数年前のことになる。どっしりとした構えで、しっかりと温かなピアノだ。信頼と安心が湧き上がる演奏だった。
次男の提案からピアノ・ソロを録音することになって、曲も孫娘や長男や姉に贈るものが集められたという。心穏やかに、愛情が通っていて、それで音楽はゆったりと豊かに満ちている。愛想曲集、という言葉がぴったりな気がする。月の光、ノクターン、エリーゼのために、秋の歌、即興曲、トロイメライ、アラベスク、きらきら星変奏曲。なかでも、1974年のチャイコフスキー・コンクールで弾いた思い出が深いという『四季』の「10月 秋の歌」が、ぼくはとても好きだ。
誰もが親しむ名曲をひとつひとつ、私信のように心を込めて、慈しむように息づかせている。温かな手のうちで、激しさも深さもまた、じんわりした静けさのなかにある。
そういうとき、ふと手がのびたのが、このアルバム。Myng Whun Chung piano――タイトルが小さく、水墨画ふうにみえなくもない木立の写真の上のほうに記されている。ただ、それだけのことがじんわりと滲むように響いてくるのが、このアルバムの素晴らしさでもある。
チョン・ミョンフンのピアノを聴くのは、とっても久しぶりだ。これが初めてのピアノ・ソロ・アルバムで、2013年7月、フェニーチェ劇場でのレコーディング。ぼくがコンサートで近く思い出すのも、「セヴン・スターズ」と題して彼がひらいていた室内楽で、つまりはもう十数年前のことになる。どっしりとした構えで、しっかりと温かなピアノだ。信頼と安心が湧き上がる演奏だった。
次男の提案からピアノ・ソロを録音することになって、曲も孫娘や長男や姉に贈るものが集められたという。心穏やかに、愛情が通っていて、それで音楽はゆったりと豊かに満ちている。愛想曲集、という言葉がぴったりな気がする。月の光、ノクターン、エリーゼのために、秋の歌、即興曲、トロイメライ、アラベスク、きらきら星変奏曲。なかでも、1974年のチャイコフスキー・コンクールで弾いた思い出が深いという『四季』の「10月 秋の歌」が、ぼくはとても好きだ。
誰もが親しむ名曲をひとつひとつ、私信のように心を込めて、慈しむように息づかせている。温かな手のうちで、激しさも深さもまた、じんわりした静けさのなかにある。
1 件