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静かな時に - Mompou Live

静かな時に - Mompou Live

あけましておめでとうございます。年の初め、静かな夜に。沈黙の音楽。CD◎“MOMPOU LIVE” Montserrat Alavedra (sop), Federico Mompou (pf) [Marchvivo, 2021]
  • 青澤隆明
    2022.01.01
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 好きな音楽を聴くときは、なんというか自分をゆるせる気がして。しかもただぼうっと聴いていると、それだけでいいような感じにもなってきて。もちろん、なにかは思うし、考えてしまうのだけれど、それとて音の響きに集中していると、遠くの雑音のようにみえてくる。

 新しい年のはじまりに、そうして耳を澄ましているのは、モンポウの「Música callada (沈黙の音楽)」。1977年のマドリッドでのライヴ録音が、昨2021年に初CD化されたもの。ということは、モンポウが亡くなる10年ほどまえで、83歳のときのステージだ。いまから45年前のドキュメントである。

 このときフェデリコ・モンポウ自身が弾いたのは“Música callada”の第4集。1967年にまとめられた7曲である。それから、「ポール・ヴァレリーによる5つの歌曲」が、やはりカタルーニャ生まれのソプラノ、モンセラート・アラベドラとともに演奏された。アンコールには、ピアノ独奏の『こどもの情景』から「庭の乙女たち」。そして、歌曲集『夢のたたかい』から「あなたのうえには花ばかり」。

 ただ、ひたすら音の響きに耳を澄ますように、ゆったりと、ときに悲痛に歩んで行くモンポウのピアノは、沈黙に打ち震えるように、その静けさを内密な心の歌にかえる。その人は老いてはいるが、そのかけがえのない心の純粋さと、内なる静けさの高まりは、地上における時間とは、ほとんど関係がないように感じられる。その強く澄みわたった音を、いつまでも聴いていられたら、と思う。
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