鳴り響く孤独 ‎– Mompou Interpreta Mompou

鳴り響く孤独 ‎– Mompou Interpreta Mompou

CD◎Mompou Interpreta Mompou, Federico Mompou(pf) (Ensayo, 1974)
  • 青澤隆明
    2022.01.02
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 フェデリコ・モンポウの1977年のコンサート録音のことを、昨晩ここに記した。「Música callada (沈黙の音楽)」の第4集は1967年、「ポール・ヴァレリーの詩による5つの歌曲」は1972年にまとめられたから、いずれも演奏会当時の近作だった。

 このライヴ・レコーディングを聴いていたとき、ピアノの音の響きを減衰しきるまでじっと聴き入っている感じには、どこかで覚えがあると思った。それは、たとえば武満徹のピアノ曲だった。さらにはジョン・ケージの「プリペアドピアノのためのソナタとインタリュード」の響きなども思い出されそうだが、そちらはもっと色濃くグリーグの方角からやってきているのだろう。いずれにしても、ぼくたちは静けさについて、響きを通して知覚する部分が大きい。

 さて、モンポウには自作自演盤があって、ぼくは10代の頃からずっと愛聴してきたし、いまも時折聴き入っている。1974年のレコーディング、ということは先述のコンサートの3年前で、モンポウはすでに80歳を過ぎている。最初にこの録音を聴いていた頃には、この訥々とした感じは音楽そのものの佇まいと、音の響きを確かめながらの歩みにしっくりきていて気づかなかったけれど、いくらモンポウが長寿だったとはいえ、これはかなり高齢での演奏だったのだ。それでも、その緊密な心身の集中はそうとうに傑出したもので、自作の録音を残してくれたことへの感謝は尽きない。

 こちらのアルバムは蔵出しのコンサート録音と比べると、もっとかっちりしていて、ぐっと孤独な響きに聞こえる。この静寂や沈黙も、響きも音楽も、遥かむかしからここにあって、ずっとさきまでありつづけるものだろう。
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