
光について-ふたつの夜の物語(Ⅰ)/ 新国立劇場の『夜鳴きうぐいす』と『イオランタ』
ストラヴィンスキーの命日に。新国立劇場オペラ、新制作の二本立てを観て。◇新国立劇場オペラ『夜鳴きうぐいす/イオランタ』(2021年4月6日14時開演、新国立劇場 オペラパレス)
4月6日はストラヴィンスキーの命日、そして今年2021年は没後50周年ということだが、そんなことも忘れて、この日の午後、オペラ『夜鳴きうぐいす』を観ていた。二本立て上演のもう一作はチャイコフスキーの『イオランタ』。新国立劇場での2日目の上演にあたる。
『夜鳴きうぐいす』は、「おはよう」で結ばれる美しいオペラ。そして、『イオランタ』は光に目覚めていく真実のオペラ。ストラヴィンスキーは初期のオペラ、チャイコフスキーは最晩年作にして最後のオペラだ。
『夜鳴きうぐいす』の初演は1914年、パリのオペラ座でモントゥー指揮バレエ・リュス。『イオランタ』のほうは、バレエ『くるみ割り人形』との二本立てで、1892年、ナープラヴニークの指揮により、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で上演された。
メルヘン・タッチのロシア語オペラのダブルビルだが、原作を書いたのはハンス・クリスチャン・アンデルセンとヘンリック・ヘルツという19世紀デンマークの両雄。アンデルセンが『即興詩人』で描いた少女の物語は、ヘルツが戯曲『ルネ王の娘』で脚色した王女に繋がる。イタリアで旅をともにしたふたりは、盲目のロマの少女に出会っていたのだという。
ストラヴィンスキーのオペラは「アンデルセンによる3幕の抒情物語」で、病気から皇帝を救うのはナイチンゲールの歌、つまり自然から出た芸術の力でもある。「おはよう」と中国の皇帝が唱え、語り部たる漁師の歌が喜びを歌って、調性的に平穏を美しく広げる幕切れから、休憩をはさんで、チャイコフスキーの「イオランタ」でたっぷりと調性的な豊穣に触れることができる。そこは、美と愛を純真にみつめる作曲家のつよい夢の世界でもある。
ふたつの夜の物語は、光についての寓話でもあった。
(つづく)
『夜鳴きうぐいす』は、「おはよう」で結ばれる美しいオペラ。そして、『イオランタ』は光に目覚めていく真実のオペラ。ストラヴィンスキーは初期のオペラ、チャイコフスキーは最晩年作にして最後のオペラだ。
『夜鳴きうぐいす』の初演は1914年、パリのオペラ座でモントゥー指揮バレエ・リュス。『イオランタ』のほうは、バレエ『くるみ割り人形』との二本立てで、1892年、ナープラヴニークの指揮により、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で上演された。
メルヘン・タッチのロシア語オペラのダブルビルだが、原作を書いたのはハンス・クリスチャン・アンデルセンとヘンリック・ヘルツという19世紀デンマークの両雄。アンデルセンが『即興詩人』で描いた少女の物語は、ヘルツが戯曲『ルネ王の娘』で脚色した王女に繋がる。イタリアで旅をともにしたふたりは、盲目のロマの少女に出会っていたのだという。
ストラヴィンスキーのオペラは「アンデルセンによる3幕の抒情物語」で、病気から皇帝を救うのはナイチンゲールの歌、つまり自然から出た芸術の力でもある。「おはよう」と中国の皇帝が唱え、語り部たる漁師の歌が喜びを歌って、調性的に平穏を美しく広げる幕切れから、休憩をはさんで、チャイコフスキーの「イオランタ」でたっぷりと調性的な豊穣に触れることができる。そこは、美と愛を純真にみつめる作曲家のつよい夢の世界でもある。
ふたつの夜の物語は、光についての寓話でもあった。
(つづく)
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