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ショパンの命日、心静かに。

ショパンの命日、心静かに。

ショパンの命日、深夜にひとり聴くアンデルシェフスキ。CD◎Piotr Anderszewski "Chopin / Ballades, Mazurkas, Polonaises" アンデルシェフスキ「ショパン・リサイタル」(Virgin/Warner)
  • 青澤隆明
    2021.10.17
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 ショパンの命日、心静かに。寒さも増してきた東京の秋、深夜に近づくなかで、ずいぶんとひさしぶりに手にとってみたのが、ピオトル・アンデルシェフスキのショパン。2003年6月の録音で、まだ若い頃の、神妙なアンデルシェフスキの演奏が聴ける。

 マズルカ、ポロネーズ、バラードから、いずれも最後の数年間に書かれた作品ばかりが集められている。とくにマズルカは亡くなる前の2、3年のうちに作曲されたものだ。アルバムに収められた11曲のうち、マズルカop.63-2、バラード第4番op.52、そしてマズルカop.68-4がヘ短調をとる。ショパンの絶筆と言われたり、没年の1849年作、48年作、46年作と諸説あるが、いずれにしても晩年作のこのマズルカop.68-4が、アルバムの最後をそっと結ぶ。

 たっぷりと時間をかけて、密やかに歌われるそのマズルカは、アンデルシェフスキのピアノの響きの面でも時間の質という面でも、曲自体の調性感の宙づりな感じからしても、この世のものとは思えないところがあり、孤独な魂の漂泊へと連れ添うように聴くひとを誘い出す。
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