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ペライアのバッハ

ペライアのバッハ

CD◎マレイ・ペライア(p) 「バッハ:フランス組曲 BWV812-817」 (DG, UCCG1757/8)
  • 青澤隆明
    2020.04.21
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 マレイ・ペライアのバッハを聴こう、と思った。新しいほうから『フランス組曲』のアルバムを久しぶりに手にとって、昨日、4月19日が彼の誕生日だと気づく。73歳。おめでとうございます。春に生まれた人なんだな、という気はたしかにする。
 ペライアの弾く『フランス組曲』は、モダン・ピアノの清らかな響き、温かな潤いと流麗な語りに満ちている。やわらかな光に包まれるような優しさにも。たとえばト長調のサラバンドを聴いているだけで、ぼくは十分に幸福であると感じる。曲の素晴らしさだけではなくて、ピアニストがまさにそのようにバッハを弾いているからにちがいない。慰め、安らぎ、敬虔さ、祈り、感謝。そうした思いの広がりがすべて、ペライアという人間の純粋さを通じて、ここに蒸留されて響いているように感じとれる。それが決してたやすい愛情ではないこともよくわかる。人生には素晴らしいことがきっとまだまだある。
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