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新しい旅の風景を - 宮田大と大萩康司のTravelogue

新しい旅の風景を - 宮田大と大萩康司のTravelogue

CD◎宮田大(vc) & 大萩康司(g) "Travelogue" (Columbia, 2020)
  • 青澤隆明
    2021.02.08
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 2020年、夏。旅ができない時分に、ふたりはいよいよ充実した旅に乗り出していた。チェリストの宮田大とギタリストの大萩康司がそうして長野県でレコーディングしたのは、“Travelogue”と名づけられたアルバム。ルグランにはじまり、ピアソラとニャタリ、ショパン、サティとラヴェルをめぐって、ピアソラに帰り着く旅行記だ。

 チェロとギターの二重奏レパートリーであるだけに、ニャタリのソナタがオリジナルで収録されたほかは、すべてが編曲の手を介している。大萩と宮田自身をはじめ、つのだたかし、角田隆太、徳武正和がチェロとギターのアンサンブルの響きを活かし、繊細な情趣と緻密な対話の魅力を抽き出している。原曲にはない表情や色彩も、ふたりのキャンバスには広がっているし、ルグランの「キャラバンの到着」からその期待はスリリングに充たされる。フランスとアルゼンチンに根はもつが、それはやはりここにしかない響きの光景である。

 大萩康司のギターが水彩画のような色彩の滲みも活かし、精細に風景を歌い拓く。宮田大というチェリストが卓越した歌い手であることは、ピアソラの「オブリビオン」での語りかけにも顕著に表れている。ふたりが歩むたび、風景が広がり、鮮やかな映像をともなって、旅は拓かれていく。多彩な光景を織りなしながら、ふたりはさらに聴き手を連れて旅を進める。
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