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花火 ち - エリアフ・インバルのストラヴィンスキー 

花火 ち - エリアフ・インバルのストラヴィンスキー 

季節のうた、夏。ストラヴィンスキーの「花火」。◎エリアフ・インバル指揮 フィルハーモニア管弦楽団(1990年録音)- “Igor Stravinsky Edition” (Warner Classics, 2021)
  • 青澤隆明
    2021.09.01
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 ストラヴィンスキーの自作自演盤は時代の証言でもあった。あわせて聴いていたもうひとつは、エリアフ・インバルがフィルハーモニア管弦楽団を指揮したレコーディング。1990年のロンドン録音で、時代はすでにCDの季節に入っている。

 ストラヴィンスキー没後50周年を記念したWarner Classicsのストラヴィンスキー・ボックスにもまとめられていて、その1枚として聴いた。このボックスはかなり聴きごたえのある充実の構成だから、また改めてなにかここにも書くかもしれない。インバルの録音はその冒頭を飾るcd1で、幻想的スケルツォ、花火、「火の鳥」バレエ全曲版という1908年から1910年の初期作によるセンセーショナルな情景が続く。20世紀の音楽冒険の幕開けに相応しい。録音も古めかしくなく、颯爽としたオーケストラがストラヴィンスキーの鮮やかなオーケストラ創作の始まりを告げる。

 インバルが指揮するロンドンのフィルハーモニア管の演奏は、自作自演のアメリカ盤と比べれば、ずっと流麗で、優美にたっぷりと描かれている。音の輪郭もクリーン。スローモーションが滑らかできれい。とくにテンポが落ちるところの推移は、充分に音を保って聴かせようという、よく鳴らすタクトの配慮が明瞭だ。現代の演奏という趣で、きな臭さみたいなものはない。いたって視界良好である。
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