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グリーグのグラモフォン - Grieg on Gramophone

グリーグのグラモフォン - Grieg on Gramophone

春に。グリーグのピアノ曲を自作自演で聴く。CD◎Legendary Piano Recordings (Marston 2008)
  • 青澤隆明
    2022.03.22
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 春がきて、しかし寒い雨の朝だ。エドヴァルド・グリーグ自身のピアノで、かけがえのない小品を聴く。1903年5月2日、パリのグラモフォン&タイプライターで吹き込まれたという自作自演の復刻盤。ドレフュス事件への発言も冷めやらぬなかでの訪仏の折、グリーグは9つの自作曲を録音した。そのうちの5曲が『抒情小曲集』の諸集に収められた作品である。ほかにソナタop.7の抜粋と、op.6とop.19からのユモレスクも採録された。

 自作自演が最上などと言うつもりは毛頭ないが、ここには曲の気持ち、それを弾くそのときのグリーグの気持ちが自然に表れているように思える。慈愛にも似たまなざしのうちに、清新な息づかいを宿している。録音媒体の収録制限もあって出版譜よりもテンポを速めたところもあるかもしれないが、じつに濃やかな演奏なのだ。

 再現芸術といっても後年とは再生のありかたが違って、録音も編集も初期、一期一会のものでしかない。それがかえって、ひっそりと眩しい。「蝶々」の軽やかな羽ばたきから、魔法のような優美さが舞う。「春に寄す」にかよう、雪解けのような気持ち。「ガンガル」の繊細な踊り。「トロルハウゲンの婚礼の日」の溌剌とした喜び。そして、連作全集を結ぶ「余韻」、在りし日を想う。 
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