ベートーヴェンの第10 -ピアノとヴァイオリンのためのソナタのこと

ベートーヴェンの第10 -ピアノとヴァイオリンのためのソナタのこと

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタをまとめて聴くと…。
  • 青澤隆明
    2020.11.24
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 ベートーヴェンのソナタ、ヴァイオリンとピアノの10曲を夕方から順番に聴き継いでいって、3つのイ長調のさきに、2つめのト長調ソナタがやってきたときの感興には、やはり独特なものがあるなと改めて思った。op.30の3曲がイ長調、ハ短調、ト長調、《クロイツェル》op.47がイ長調で、しばらく歳月が開いて最後作op.96がト長調で語られる。このくつろいだ対話感というのは、コンチェルタンテな大力作で盛り上がったあとだけに、しっくりといいなあと感じ入った。

 べつにまとめて聴かなくたって……とぼくはついつい腰が引けてしまうものだけれど、ひとつのジャンルをまとめて体験するのもときどきは必要なのだろう、と改めて言うまでもないかもしれないことをまたしても確認した感じ。CDならぜんぶで3枚にも収まってしまう時間だし。作曲年代も9曲は6年間に集中、9年ほど経ってもう1曲という成り立ちだが、それぞれの様式や表現内容はそうとうに異なっている。さすがに天才である。

 ピアノ・ソナタを軸にみれば、最初の9曲が《悲愴》op.13から《ワルトシュタイン》op.53の前後で収まってしまうように、《クロイツェル》にいたろうと、まだまだベートーヴェンも若い。それが第10番にくれば後期の手前の歌に溢れた年代だから、それをヴァイオリンとピアノで聴かずにいるのはやはりもったいない。それはそうだよな。ほんとうに温かく沁みてきた。いろいろあるけれど、きょう多く聴いていたのはルノー・カピュソンとフランク・ブラレイのデュオ。
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