ラモーの午後 -テレーズ・デュソウのピアノとともに

ラモーの午後 -テレーズ・デュソウのピアノとともに

LP◎Thérèse Dussaut (pf) "Jean-Phillpe Rameau Intégrale de clavier"(FY RECORD)
  • 青澤隆明
    2020.12.11
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 冬の午後、テレーズ・デゥソウのラモーをずっと聞いていた。ずいぶんまえに、チェリストの友人がトゥールーズから送ってくれたLPだ。ひさびさに針を落とした。ラモーの鍵盤曲全集で1977年から79までと、1981年から83年までの録音。5枚組でFace Jまであって、ゆったりと聴くのにとてもいい。

 訥々と、まさに紡がれるというタッチで織りなされていく、慎ましいピアノの音に耳を澄ましていると、午後が夕方になり、夕方が夜になるのも、とてもしっくりとくる。一日がこういうふうに過ぎていくのなら、それを幸せに思ってもよいのではないかと感じる。

 才気煥発なラモー演奏に刺激を求めるのもやぶさかではないけれど、テレーズ・デュソウのピアノはずっと聴いていたくなるし、きちんと足をとめて、おしまいまで聞き届けたくなる。穏やかで静かだが、そういう自然な引力をすみずみまでそっと湛えている。聴く者の心もいつしか、密やかな時をみつめる。
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