
旅の終わり、その続き - ピーター・サーキンを想う
ピーター・サーキン(ゼルキン)が2020年2月1日、ニューヨークの自宅で亡くなった。膵臓がんを患い、72歳の人生をおえられた。かけがえのない音楽家で、冒険者で、戦後のアメリカを象徴するピアニストのひとりだった。
ピーター・サーキンが亡くなった。ほんとうに言葉がない。いくつもの演奏会のことを、その音と演奏を、ただひたすらに思い出しているだけで。
ぼくが初めて彼の実演に触れたのは1990年と遅くて、だからコンサートの記憶はここ30年に満たない。だけど、そのときから、ピーター・サーキンという人が、この世界のどこかで音楽を続けていることが、どれほどぼくの密かな勇気になってきたかわからない。ほんとうに、ありがとうございました。
同時代でもなければ、メンター的な存在というわけでもなく、個人的な思い出はごくわずかなのだが、それでも彼のことを思い出すたび、ぼくは大事なものをあきらめずにいられることがうれしかった。つねに真率なその演奏に聴くかぎり、自らが信じる音楽と人間のために生きて、自分の人生を頑なにまっとうされた方であるに違いない。
その探求にはどこまでも終わりがない。それなのに、人生の時間にはいつか果てがくる。そのことがつらい。
けれど、音楽はそこで終わってはいないのだと思う。ぼくたちがなんとかそれを聴きとろうとしているかぎり。友人たちとかけがえのない再会を喜びながら、その人はまだまだ真剣に旅を続けているさなかだろう。音楽が彼を手ばなすはずがない。
ぼくが初めて彼の実演に触れたのは1990年と遅くて、だからコンサートの記憶はここ30年に満たない。だけど、そのときから、ピーター・サーキンという人が、この世界のどこかで音楽を続けていることが、どれほどぼくの密かな勇気になってきたかわからない。ほんとうに、ありがとうございました。
同時代でもなければ、メンター的な存在というわけでもなく、個人的な思い出はごくわずかなのだが、それでも彼のことを思い出すたび、ぼくは大事なものをあきらめずにいられることがうれしかった。つねに真率なその演奏に聴くかぎり、自らが信じる音楽と人間のために生きて、自分の人生を頑なにまっとうされた方であるに違いない。
その探求にはどこまでも終わりがない。それなのに、人生の時間にはいつか果てがくる。そのことがつらい。
けれど、音楽はそこで終わってはいないのだと思う。ぼくたちがなんとかそれを聴きとろうとしているかぎり。友人たちとかけがえのない再会を喜びながら、その人はまだまだ真剣に旅を続けているさなかだろう。音楽が彼を手ばなすはずがない。
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