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モリコーネの歌 -エンニオ・モリコーネ & ドゥルス・ポンテス『フォーカス』 

モリコーネの歌 -エンニオ・モリコーネ & ドゥルス・ポンテス『フォーカス』 

CD◎ENNIO MORRICONE & DULCE PONTES “focus” (Univarsal Music NL)
  • 青澤隆明
    2020.07.07
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 それから深夜まで、ずっと歌のアルバムを聴いていた。エンニオ・モリコーネがドゥルス・ポンテスと創った『フォーカス』という、2003年の作品だった。

 ファドをベースとしたポルトガルの女性歌手のしっとりと艶やかなヴォーカルを乗せて、モリコーネ指揮するローマ・シンフォニエッタの管弦楽が悠々と広がっていく。『アリーナ・コンチェルト』にまとめられたコンサート・ツアーを行っていた時期の作だ。

 モリコーネの旋律が熱く、柔らかく色づけられ、歌には滲むような憂いのしなやかさもある。ファドの歌声が森を抜け、空を雄大に駆けるようなドラマティックな展望がある。熱く、濃く、のびやかに色彩がくり広げられる。

 モリコーネはポンテスを招いた1995年のときに、いつかいっしょにアルバムを創ろうと言ったが、それは彼女が30歳になるのを待ってという約束だった。8年後にそのいつかは訪れ、モリコーネの本拠たるローマで、このソング・ブックのレコーディングが実った。そのフォーカスは濃密に合っている。

 モリコーネ天性の名旋律の深い印象に沿って、リリックは新たに付されたものもあり、『ニュー・シネマ・パラダイス』の愛のテーマをはじめ、いくつかの曲にジョアン・メンドンサが作詞。ドゥルス・ポンテス自身も詩を書いている。

 ひとことで言うなら、これは愛のアルバムである。広大な自然に澄み渡って、しなやかに命を歌い上げる。これまで私が歌手としたなかでもっとも重要な仕事のひとつ――とモリコーネ自らこのレコードを称えた言葉とともに、かのパウロ・コエーリョが美しい短文を寄せている。
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