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人々の生きる都会のなかで- 原田慶太楼指揮読響のコープランドとハイドン

人々の生きる都会のなかで- 原田慶太楼指揮読響のコープランドとハイドン

読響の特別演奏会シリーズに、原田慶太楼が颯爽と登場 (2020年7月14日、サントリーホール)。
  • 青澤隆明
    2020.07.24
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 読響再開の3つの《特別演奏会》のはじまりが、鈴木優人の指揮で「♯この自然界に生きる」という副題ならば、原田慶太楼の指揮した第2弾は「♯孤独を乗り越え、進め!」。

 曲目は、コープランドとハイドンで、アメリカ仕込みの新鋭の良さが活きた選曲。先だってのプログラムからの繋がりで読めば、自然から出て、人のなかへ。演奏もそうなったが、浮かび上がるのは、都会という人々の営みのありようだ。

 とはいえ、コープランドが「市民のためのファンファーレ(Fanfare for the Common Man)」、「静かな都会(Quiet City)」という二様の都会であり、ハイドンはロンドンの聴衆のために書かれた「軍隊交響曲」で、都市も人々の光景も150年くらいは違う。それでも、自然というよりは、はるかに人為的という意味で、人間の、というか市民社会の音楽である。
 
 原田慶太楼の指揮は、コープランドの「ファンファーレ」で豪放に鳴らした威勢のいい音楽を聴かせたかと思うと、一転して「静かな都市」では寂寥も滲むような抒情をクールに描く。辻本憲一のトランペット、北村貴子のイングリッシュ・ホルンを主人公に、弦楽が精彩に広がっていった。コンサートマスターは日下紗矢子で、弦はもちろん全体のアンサンブルをまとめるのに確かな牽引力となっていたことが、続くハイドンの「軍隊」でも大きかった。「ソーシャル・ティスタンシング」の号令どおり、読響の前回演奏会同様、譜面台も一人一本置き、奏者間距離を開けてのチャレンジとなったが、それを充たすのはやはり強いアンサンブルの意志なのだった。

 原田のハイドンは、ダイナミックな持ち味は活かしつつ、たんにリズミックにさっぱりと明快に弾ませるのではない。20世紀モダンを髣髴させる風合いで随所を色づけるのが、作曲家の機知を踏まえるだけでなく、響きの油彩的な色彩にもよく表れていた。アンコールにはミリタリー繋がりで、シューベルトの「軍隊行進曲」(ギロー編)を演奏したが、ここでは翳りのあるというか、曇った音色を採って、耳を惹いた。プレゼンテーションがくっきりした指揮者である。
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