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新年の温故知新 - トッパンホール・ニューイヤーコンサート 2020を聴いて

新年の温故知新 - トッパンホール・ニューイヤーコンサート 2020を聴いて

「トッパンホール・ニューイヤーコンサート 2020」ダニエル・セペック(コンサートマスター&ヴァイオリン独奏) / 山根一仁(ヴァイオリン) / ペーター・ブルンズ(チェロ) / トッパンホール チェンバー・オーケストラ (2020年1月8日、トッパンホール) J.G.グラウン:ヴァイオリン協奏曲 イ長調 GraunWV A:XIII:10、ハイドン:チェロ協奏曲第1番 ハ長調 Hob.VIIb-1、 ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集 Op.8-1~4《四季》
  • 青澤隆明
    2020.01.14
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 コンサートを聴くのは大きな楽しみなのだけれど、それなりに、というか、けっこう覚悟もいるので、年末年始はわりとゆったり休みをとった。ということで、2020年の聴き初めは、トッパンホールのニューイヤーコンサート。ダニエル・セペックがソロとコンサートマスターで活躍するのだから、これはよい年明けになるに違いないと、いそいそと出かけた。

 トッパンホール チェンバー・オーケストラというのは、このホールがコンサートに合わせてそのたびに編成するもので、今回はそこにソリストとして、ヴァイオリンのセペックのほか、チェロのペーター・ブルンズ、ヴァイオリンの山根一仁がフィーチャーされる構成。ヴィヴァルディとハイドンに、グラウンを渡すあたり、プログラムもさりげなく凝っている。セペックとブルンズはソロが終わるとオーケストラなかに入る流れで、それだけに曲が進むにつれてアンサンブルが引き締まり、かけ合いも鮮やかで自由になってくる側面もあった。

 はじまりは、ヨハン・ゴッドリーブ・グラウンのヴァイオリン協奏曲イ長調。ピゼンデルやタルティーニに師事したグラウンは、ハイドンの30歳ほど年長で、時代的にも様式的にもバロックと初期古典派を繋ぐ存在。セペックたっての希望でプログラムに組まれたとのことで、トゥッティとソロの往還で進むリトルネロ形式をとりつつ、多様な性格を表現していった。こういう曲を実演で聴けるのはいい。

 続いては、ペーター・ブルンズがハイドンのハ長調協奏曲で、前がかったソロを焚きつけ、あたかも疾風怒濤へ向かわんばかりの気魄で攻めるのを、セペックがオーケストラを率いて巧みに応えるさまがまたスリリング。長年貢献してきたドイツ・カンマーフィルでも、セペックがコンサートマスターの席に座ると音楽の表情が俄然生気を帯びるが、臨時編成の今回にしても魅力的なリードである。

 コンサート後半の『四季』では、ヴァヴァルディの気風と開放感にひらかれて、セペックもブルンズも山根のソロを触発するような応酬を聴かせつつ、アンサンブル全体を弾き締めている。山根のヴァイオリンも、多様な言葉で応えようと工夫を聴かせて、以前より表現の幅を拡げたように思えた。ぼくは長らくセペックの痛快な同曲レコーディングが好きなので、正直を言えば、彼のソロでも聴いてみたかったけれど、このホールの企画の道場的な性格からすればこちらが収穫となるだろう。

 そうして、ヴァヴァルディ、グラウンからハイドンへとリトルネロの様式が変化しつつ、ソナタの形式へと接近していくさまが多彩に織りなされていく。というところで、新年からくり返しを唱えるリトルネロにそって歩いてきたこの日記に、どこかふさわしき感もあり。
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