最後にして最初の人類が聞いたもの -ヨハン・ヨハンソンの耳に寄せて(青澤隆明)

最後にして最初の人類が聞いたもの -ヨハン・ヨハンソンの耳に寄せて(青澤隆明)

『最後にして最初の人類 Last And First Men』(ヨハン・ヨハンソン監督・脚本・音楽)を観て思ったこと。 
  • 青澤隆明
    2021.08.15
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 ある人には太古の響きの胎動、そして太古からの響きの堆積や漂流が聞こえ、ある人には20億年ほど先の人類の思惟が聞こえる。人間であれ、自然であれ、宇宙であれ、聴くことができる者には、それがいつしか聞こえてくる。

 音楽を聴くこと、そしてさまざまな音楽を訪ねることは、そうしてどこからか聞こえてくる音楽のためのレッスンに他ならないのだろう。そのさきに聞こえてくることへの研ぎ澄まされた備えであるとも言える。いずれ人間の耳に聞こえてくるのは、遥かに宇宙や自然を伝うようであっても、あくまで人間という音楽の応答なのである。

 ヨハン・ヨハンソンが手がけた最後にして最初の長編映画、『最後にして最初の人類』に刻印されたのは、そうした聞こえる耳の、聴きかたの黙示であった。その細く強い幻視の力は、遥か遠いところからでも、ひどく哀切に響いてくる。

 “Listen patiently...”
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