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ダッラーバコのカプリッチョ

ダッラーバコのカプリッチョ

CD◎"dall'Abaco - 11 Capricen für Violoncello” Kristin von der Goltz(baroque-vc) [Raumklang 2007, rec 2006]
  • 青澤隆明
    2023.01.04
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 バッハを聴いたら、べつの無伴奏チェロも聴きたくなる。そんなとき、ジョゼフ・マリー・クレモン・ダッラーバコの『奇想曲集』に触れると、いろいろな曲があって、とても楽しい。

 イタリアの音楽家ジョゼフ・ダッラーバコは、大バッハの長男ヴィルヘルム・フリーデマンと同じ1710年生まれ。ヴェローナ生まれの父ヴァイオリストで作曲家のフェリーチェ・ダッラーバコは大バッハと同世代で、ミュンヘンの宮廷でも活躍していた。生まれはブリュッセルで、ボンで頭角を現し、いろいろあって1750年代には父の生地ヴェローナに移り、なんと95歳まで長生きした。

 バッハの無伴奏組曲はさまざまな筆写譜で伝えられるが、ジョゼフ・ダッラーバコの奇想曲集もかろうじて筆写譜で後世に知られる。バッハが各国の様式に通じたように、諸国で活躍したダッラーバコもまた当世ヨーロッパの音楽様式を総合的に捉えて、これら『カプリッチ』に鮮やかに反映させた。

 大バッハの次世代といえば古典派に入る時代になるが、ジョゼフ・ダッラーバコはバロックの風情も大事にしていて、ほとんどバッハに近いのではないか、という趣の曲もあるし、対位法の粋を示したりもする。また、ギャラントな様式を華やかにみせもする。11曲が長短さまざまに万華鏡的な博覧をみせていて、曲集として変化に富んでいる。現存する筆写譜がけっこうな乱筆で、しかも第11曲は完結しておらず、そもそもなぜ12曲セットでないのかなどと不完全なところも多いのだが、それでもこれらのカプリッチョが傑作であるのは間違いない。

 さきほど聴いていたのは、クリスティン・フォン・デル・ゴルツが1785年製のバロック・チェロで演奏した全曲盤で、楽器の年代的にはダッラーバコの人生に重なってもいる。表情が巧みに柔軟で、多彩な変化と奥行きをみせるし、音が優しいので、いつまでも聴き飽きない。
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