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ドはどうする?のド -読響が鈴木優人の指揮でコンサート再始動

ドはどうする?のド -読響が鈴木優人の指揮でコンサート再始動

7月5日の東京芸術劇場でのマチネで、読売日本交響楽団のコンサート活動が再開された。指揮は4月に指揮者/クリエイティヴ・パートナーに就任したばかりの鈴木優人、以来初めての登場は、マーラー、メンデルスゾーン、モーツァルトと、“M”のさかのぼりプログラム (2020年7月5日、東京芸術劇場)
  • 青澤隆明
    2020.07.06
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 昨日7月5日の東京芸術劇場でのマチネで、読響のコンサート活動が再開された。2月22日以来というと、4か月半ぶりになるのか。7月に新たに組まれた3つの《特別演奏会》のひとつで、「♯この自然界に生きる」という副題がつけられている。さりげなく素晴らしい。4月に指揮者/クリエイティヴ・パートナーという真新しい肩書をになった鈴木優人の登場。5月の演奏会は中止となり、これがひとまずのお披露目コンサートとなった。

 マーラーのアダージェットが清明に歌い出されると、この演奏の耽美でも過剰でもない、けれど満ち足りた優美さのなかで、さまざまな雑念も離れていき、ああ、いい曲だなあ、とあらためて思った。はじまってみれば、余計な思い入れや感傷もぼくにはなく、ヴィスコンティとかも頭を過ぎることなく、マスクをつけて座っていても、心の呼吸はすーっと深くなる。

 休憩なしのプログラムは、弦楽、管打楽、管弦楽と3様の編成をとりつつ、多彩な作品を織りなした。マーラーの交響曲第5番の第4楽章、メンデルスゾーン若書きの「管楽器(ハルモニームジーク)のための序曲」、そしてモーツァルトの交響曲K.551「ジュピター」。メンデルスゾーンのハルモニアムジークでは管楽器の面々が大勢舞台にのって、開放的で明朗な響きで大らかに歌ったあと、「ジュピター」が大ハ長調交響曲として続いた。

 幕開けから、すべての曲がドで始まるプログラム。続く2曲はハ長調曲で、コンサートはもちろんドに帰って終わる。自然でいえば、ドは土ともなるか。鈴木優人のプロデュース・センスあってだろう、さすがにスマートな構成で、再開の意を含め、新しい始まりを謳った。堂々と、ドーだ!

 舞台上はプレイヤーの間隔を開けつつ、対抗配置をとり、ジュピターでいうと第1ヴァイオリンが6人の小編成。そうした距離のためか、ひさびさのオーケストラだからか、客席が基本一席おきの使用だからか、演奏の志向とはべつのところで、オーケストラの響きが聴きなれた感じとは違うけれど、でもそれはそれだ。アンコールにはラモーの「未開人の踊り」を披露、本篇にはなかった色彩と地熱を響かせ、こちらの方向でのクリエイティヴ・パートナーとしての取り組みが楽しみになった。
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