【伝説の記録】クラウス・マケラ×パリ管弦楽団 2022来日公演レビュー|新たな黄金時代の幕開け(文:柴田克彦)

2027年からシカゴ交響楽団とロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のポストを手にする若き天才、クラウス・マケラ(Klaus Mäkelä)。彼がパリ管弦楽団を率いて2022年10月に実現した日本ツアーは、日本の聴衆に「新時代の到来」を強烈に印象づけました。

この記事では、音楽評論家・柴田克彦氏のレビューを参考に、あの熱狂と興奮を振り返ります。当時26歳のマエストロがパリ管から引き出した音とは、どのようなものだったのでしょうか。

目次

【本文:柴田氏のレビュー】

マケラ&パリ管の2022年来日公演、どんな演奏だったの?

2022年10月15日、東京芸術劇場で幕を開けた日本ツアー。音楽評論家の柴田克彦氏は、初日公演に足を運びました。

柴田氏は「従来のパリ管のイメージ通りの部分と、新たな境地を併せ持つ演奏」と評しています。どちらかといえば、後者をより強く感じたとのこと。

編集部

「イメージ通り」と「新たな境地」、両方を味わえたのですね

伝統と革新の融合:パリ管の新シェフ、マケラへの期待

柴田氏によれば、パリ管らしさとして挙げられるのは、弦楽器の豊潤で肌触りの良い音色と、各奏者の名人芸。一方、マケラがもたらした新しい要素は、「いつにない集中力の高さ」と「激烈なエネルギー」だったといいます。

2022年来日公演の概要

公演期間2022年10月15日〜23日
会場東京、名古屋、岡山、大阪
主なプログラム海、ボレロ、春の祭典 他

頑固な個性派として知られる名門パリ管。当時26歳の若きシェフが、彼らからどんな音楽を引き出すのか。柴田氏も期待に胸を膨らませて会場へ向かったそうです。

聴いたことがないほど活気のある「海」、そして圧巻の「ボレロ」

ドビュッシー「海」はどんな演奏だったの?

1曲目のドビュッシー「海」について、柴田氏は「パリ管の演奏では聴いたことがないほど活気のある『海』」と振り返っています。

第1楽章はデリケートかつ緻密。細かな動きのさりげない強調や、各楽器のブレンド音が新鮮な感触をもたらしたとのこと。第2楽章では動きがより生気を帯び、第3楽章はさらにダイナミックだったといいます。

柴田氏いわく、第3楽章では低弦の強調が効果的だった

続くラヴェル「ボレロ」では、管楽器ソロの巧みさはもちろん、普段は目立たないミックス音や弦楽器のフレーズが耳新しさを醸し出したそうです。

特に後半のパワフルさは圧巻。柴田氏は「通常の感覚のフォルテから1段2段3段とボリュームを増しながら終結に至った」と、その迫力に驚きを隠せない様子でした。

激烈なエネルギーで畳み掛ける「春の祭典」

後半のストラヴィンスキー「春の祭典」も活力十分だったと、柴田氏は語っています。

第1部では、弦楽器のしなやかな響きが際立つと同時に、速い部分の駆動力と推進力が凄まじかったとのこと。第2部の冒頭、静かな箇所での音の積み重ねは意外に新鮮だったそうです。

編集部

普段強調されない弦楽器の動きが効果を発揮していたのですね

後半は、圧倒的なエネルギーとパワーで畳み込む展開。そしてアンコールのムソルグスキー「モスクワ川の夜明け」では、冒頭のヴィオラから終始エレガントな音色と絶妙な歌い回しで聴衆を魅了しました。

柴田氏いわく、「パリ管らしさ全開で締めくくった」とのことです。

総評:マケラはやはり只者ではない

柴田氏が最も驚いたのは、パリ管のメンバーたちが懸命に演奏する姿だったといいます。

「かくも高い集中力で全力投球する彼らを見たのは初めて」と柴田氏。生気と活力をオーケストラから引き出しながら音楽を活性化するマケラを、「やはり只者ではない」と評しています。

マケラの真価は、オーケストラの「本気」を引き出す力にある

名門楽団の誇り高きメンバーたちが、若きマエストロのもとで一心不乱に音を紡ぐ。2022年の日本ツアーは、まさに「新時代の到来」を告げる公演だったのです。

【編集後記:2026年の視点から】

2022年の来日公演から、マケラはどうなったの?

2022年の衝撃から3年以上が経ちました。マケラとパリ管の関係はさらに深化し、2025年6月には待望の再来日が実現しています。

2024年4月には、2027年9月からシカゴ交響楽団の第11代音楽監督に就任することが発表されました。同時期にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者にも就任予定。29歳にして、欧米を代表する2つの名門オーケストラを率いるという前代未聞の快挙です。

編集部

まさに「クラシック界の皇帝」への道を歩んでいますね

マケラの主なポスト(2026年1月現在)

パリ管弦楽団音楽監督(2021年〜)
オスロ・フィル首席指揮者(2020年〜)
シカゴ響音楽監督(2027年9月〜予定)
コンセルトヘボウ管首席指揮者(2027年9月〜予定)

2022年の来日公演で披露した「海」「ボレロ」「春の祭典」の映像は、現在もYouTubeなどで一部視聴できます。

▼ パリ管公式チャンネルより

マケラの指揮姿と、パリ管の響きをぜひ映像で体感してください

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※本記事は2022年の公演レビューを参考に、編集部が再構成したものです。引用元の評価・感想は音楽評論家・柴田克彦氏によるものです。

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この記事を書いた人

Medici Arts Guide 編集部のアバター Medici Arts Guide 編集部 舞台・芸術配信専門ライター

Medici Arts Guide 編集部 オペラ、クラシック、舞台芸術に造詣が深い専門ライター陣で構成。最新の動画配信(VOD)情報をはじめ、ライブ配信視聴ガイドなど、「劇場の感動を自宅で再現する」ための一次情報を発信しています。

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